骨粗鬆症

日本における骨粗鬆症患者の割合

昨今の日本は他国よりも早く、超高齢化社会へ向かっています。平均寿命が伸びたことから、2015年には、60歳以上の人口は総人口の30%以上を占めていると言われています。また、日本における骨粗鬆症の患者数は1300万人ほどですが、きちんと治療を受けている患者数は全体の20%程度だとも言われています。骨粗鬆症は自覚症状がなかなか現れないため、骨折をしてから発見される傾向が強いです。

骨粗鬆症とは

骨粗鬆症とは、「骨の強度が低下する(スカスカになる)ことで、骨折しやすくなる」病気です。骨の強度には「骨密度」と「骨質」が関係しています。「骨密度」と「骨質」を見直すことで、骨折を防ぐことが骨粗鬆症治療において重要視されています。
骨粗鬆症は早くから予防するべき病気であり、今は自覚症状のない方でも、以下のような危険因子をお持ちの場合は、ぜひ一度受診してください。

  • 骨折歴が多い
  • ご両親の中で、大腿骨近位部の骨折歴のある方がいる
  • 喫煙者、お酒を習慣的に飲む方(例:ビールの場合、コップ3杯以上を毎日飲んでいる)
  • ステロイドを定期服用している方、または過去に3ヶ月以上服用してきた方
  • 糖尿病や関節リウマチ、甲状腺機能亢進症、45歳未満の早期閉経など、骨粗鬆症の発症リスクを上げる病気をもつ方

骨粗鬆症と
骨折について

特に、閉経後の女性の中には「最近、背が縮んだ」「以前より背中が曲がってきた」「なぜか腰が痛い」といった症状に心当たりのある方がいらっしゃるかと思います。
「加齢」が原因だと思われる方も少なくありませんが、必ずしも加齢が原因とは限りません。骨粗鬆症による「いつのまにか骨折」が潜んでいるかもしれません。
特に、25歳頃の身長より「4cm以上」低くなった方は、そうではない方より骨折するリスクが2倍以上高いと言われています。また、要介護になる方の8人に1人が、「転倒・骨折」が原因だと報告されています。
骨粗鬆症によって骨折しやすい部位には特徴があり、50歳から60歳の方は手首の骨折(橈骨遠位端)が多い傾向にあります。そして、年齢が上昇すると、腕の付け根部分や胸椎・腰椎の骨折が増えていき、最終的には脚の付け根部分(大腿骨近位部)の骨折が起こりやすくなります。大腿骨近位部の骨折が起きると、ほぼ100%手術する必要がある上に、骨折が治っても機能障害が残ることで歩行能力が低下する可能性があります

診断方法

問診でお聞きした内容と、診察で得られた情報、骨密度検査や血液検査・尿検査などの検査結果から総合的に診断します。

X線検査(胸腰椎2方向)

X線検査では、自覚のない圧迫骨折の有無をはじめ、骨変形、椎間板変性による背骨の変形の有無などを調べていきます。

骨密度検査

日本骨粗鬆症学会のガイドラインにて推奨されている「腰椎・大腿骨を用いたDEXA(デキサ)法」用いた測定を行っております。

血液検査

「骨代謝マーカー」の検査は、骨粗鬆症の治療において欠かせない検査です。骨代謝マーカーの数値から、骨の新陳代謝に異常が起きているかどうかが分かります。骨吸収を示す骨代謝マーカーが高かった方の場合、骨密度の低下速度が速いことが分かるため、骨密度の数値に関係なく骨折のリスクが高いと言われております。これらの数値を踏まえてから、患者さんの骨の状態に合った薬剤を選択します。また、血液検査の結果を頼りに、骨髄腫など骨粗鬆症以外の原因となる病気を鑑別することもできます。

骨粗鬆症を
治療するには

骨粗鬆症を改善させるためには、食事と運動・薬物による療法が欠かせません。

食事療法

栄養バランスを考慮し、脂肪分・塩分の多い食べ物は摂りすぎないようにしましょう。必要なカルシウムの摂取量は食品として「700~800mg/日以上」程度で、ビタミンDやビタミンKも忘れずに摂取してください。
カルシウム不足は、血管などの組織にあるカルシウムが増量するのを引き起こすため、動脈硬化症・糖尿病・高血圧など、骨粗鬆症以外の病気を発症するリスクも高くなります。実際、骨粗鬆症の患者さんの多くが、動脈石灰化による冠状動脈疾患・心臓病を併発していると言われています。そのため骨粗鬆症と動脈硬化を同時に防ぐためには、十分なカルシウムの摂取と、カルシウム以外の骨代謝に欠かせない栄養素であるビタミンDやビタミンKの摂取が重要視されています。
絶対に食べてはいけない食品はありませんが、カルシウムの排泄を促す効果を持つカフェインやアルコールなどは摂りすぎないよう控えてください。また、過量のアルコールも、カルシウムの吸収を妨げたり、尿からのカルシウムの排泄量を増やしたりする効果がありますので、適量の摂取にとどめてください。

運動療法

骨を丈夫にするには、運動して負荷をかけることが必要です。また、筋肉を鍛えることで身体を支えられるようになったり、バランス感覚が改善されたりするため、ふらつきが軽減されて転倒リスクも抑えられます。そのため、運動療法は骨粗鬆症の治療において重要です。
特別ハードな運動をする必要はありません。週に数回の散歩だけでも効果は得られるため、コツコツ続けましょう。また、脊椎の骨折を予防するため、背筋トレーニングも大事です。

薬物療法

検査結果はもちろん、状態や重症度を考慮しながら処方する薬物を選択していきます。骨粗鬆症の治療薬は「骨吸収抑制薬」と「骨形成促進薬」の2種類があり、他にも骨密度を上昇させるため補助薬も使用されております。薬の効果・副作用には個人差があるため、定期的な検査を受けながら服薬を継続することが大事です。

主な薬剤
  • 収抑制薬
    SERM製剤、抗RANKLモノクローナル抗体製剤
  • 成促進薬
    PTH製剤(副甲状腺ホルモン)製剤、ビスホスホネート製剤

  • ビタミンK、ビタミンD製剤など

Q&A

骨粗鬆症は 何歳頃から検査を受けた方が良いですか。

特に女性の方は閉経を機に骨密度の低下が進んでしまうため、50歳になりましたら骨密度検査を一度受けることを推奨します。

痛みがなくても治療は続けた方がいいでしょうか。

骨粗鬆症を発症しても痛みはほとんど起きません。ただし、骨粗鬆症によって骨折が起きると、痛みが生じます。その場合は骨折の治療をして回復することで、痛みは少しずつ和らいでいきますが、骨粗鬆症が治っているわけではありません。むしろ、次に骨折を起こすリスクは一回目より上昇します。そのため、一度骨折をした方は、治療を継続して受けることが重要です。

骨粗鬆症にかかりやすい要因はありますか。

ご家族の中で骨粗鬆症の患者さんがいらっしゃる場合は、そうでない場合よりも骨粗鬆症になりやすい傾向にあるため、要注意です。骨粗鬆症は遺伝的要素が認められている病気ですが、ご家族の間では食事の嗜好や運動量など、生活習慣における共通点が多いことも発症と関係していると言われています。
また、痩せ型の方や閉経の時期が早く来た方なども、骨粗鬆症になりやすい傾向が強いです。女性の骨は女性ホルモンの働きで守られていますが、閉経によってその働きがなくなることで、骨の老化は進行します。また、若い頃から必要以上にダイエットしてきた方も、骨粗鬆症のリスクは高いとされています。

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